生きるために食べ、食べるために戦う|九井諒子『ダンジョン飯』1巻感想

九井諒子著『ダンジョン飯』の1巻を読んだ。

ダンジョン飯 1巻 (HARTA COMIX)

ダンジョン飯 1巻 (HARTA COMIX)

 

迷宮内にいる魔物を倒し調理して食べる、新感覚グルメ漫画生の特権としての「食」をテーマに、迷宮に挑む冒険者たちの日常生活を丁寧に観察した作品である。

そんな本作の「倒した魔物を調理して食べる」という斬新なコンセプトを支えているのが、RPGをベースにした世界観。

何度死んでも生き返ったり、装備品を売って換金したり、迷宮の最深部から魔法で脱出したりと、RPGのお約束事が作品世界にナチュラルに溶け込んでいる点が面白かった。特に、何度死んでも生き返れる(パーティが全滅してもすぐにリトライできる)というRPGならではと言えるメタ的な設定のおかげで全体的に明るい雰囲気になっている。作中で死が意図的に軽く扱われているからこそ、シリアスな展開に傾きすぎることがないというか。このRPG特有の「命の軽さ」が「食料を調理する」という人間ならではの丁寧な行為との親和性を高めていると感じた。

冒険者は何度でも生き返り、やり直すことができる。しかし基礎的な実力が備わっていなければ結局何度も同じところで躓くことになり、先へ進むことはできない。そこで必要となるのが、バランスの良い食事に適度な運動、充分な睡眠。そういった規則正しい生活が「強さ」を形作るということを本作は描いている。日常生活と、冒険者としての「強さ」が密接に繋がっていることで、食料を調理して美味しく食べるという行為に必然性が生まれている。