死によって繰り返す少年少女の物語|『EmptyEnd』感想

青に覆われた世界で、穏やかなる死を。

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ゆっくりと瞬きをする少女に舞い上がる羽根、儚げなピアノのBGM。タイトル画面から雰囲気抜群の本作は、絵本のキャラクターである主人公が「ハザマの世界」と呼ばれる地で数日後に訪れる死を待つ物語。白と青をベースにした清潔感のあるマップを探索し、死を繰り返すことで新たな情報やアイテムを手に入れながら、主人公は世界の深層に近づいていく。

EDは全7種(差分を含めれば全8種)、1周は10~15分で、フルコンプには1時間半程度を要する。周回必須と言えど、チャプターセレクト機能が搭載されているため攻略は楽々。

 

以下、ネタバレあり。

 

実質的なトゥルーエンドであるED1には、4周目にネモの信頼度を最大にすることで辿り着ける。

絵本の主役である主人公が、何者でもないエキストラの器になり、その中で生き続ける。そんなヴルーヘルとネモの関係性は、全てを存在ごと葬り去ることで世界の救済を目指す、乱暴に言えば「生まれて来なければ幸せだった」反出生主義による終着点だった。

全EDを回収した上で感じるのは、ヴルーヘルに対するネモの願いを尊重するのであれば、ED6が最初にして最良の結末だったのではないかということ。

人は死を免れることはできないが、死に方を選ぶことはできるかもしれない。だからこそ、大切な人にはどうか穏やかな死を迎えてほしい。そういった優しいメッセージが込められていて、死をテーマにした作品ながら暖かな風が吹き抜けるような読後感を味わえた。