悪夢よ、私を解放して|『CHILD OF LIGHT』感想

数年前にセールで購入して以来、ずっと積んでいた『CHILD OF LIGHT(チャイルド オブ ライト)』というゲームをクリアした。

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1895年のオーストリアに暮らしていたオーロラは、あるときレムリアという見知らぬ国で目覚める。

愛しい我が家に帰るため、オーロラはレムリアから太陽と月と星々を奪ったといわれる闇の女王に戦いを挑み、美しく壮大な冒険を繰り広げる。

約12時間、トロフィー取得率95%でクリア。

童話的な世界観に水彩画のようなグラフィック、そしてクラシカルなターン制バトルが融合したRPG。サブクエストや手記集めといった寄り道要素もあるにはあるが、一本道のメインストーリーに沿って進めばそのほとんどが埋まるようになっており、一周で全てを味わい尽くせるようにデザインされたゲームである。

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特筆すべきはグラフィックの美しさ。UbiArt Frameworkという2D表現に特化したゲームエンジンが用いられているということで明暗のコントラストが綺麗に描かれており、作品のメインテーマである光と闇が丁寧に表現されている。

演出に関しては、空をすいすいと飛び回ったり、オーロラの赤髪がふわっと靡いたときの重力表現が素敵。剣を構えるときの重たそうな動作や、敵から攻撃を受けて王冠が頭から落ちるモーションなども印象に残った。

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アクションはシンボルエンカウントのターン制バトル。素早さ順にコマンドの選択権が与えられ、「ウェイト」と呼ばれる待機時間を経た後に技が発動される。大技ほど発動するまでのウェイトが長くなり、敵から妨害を受けやすくなる(妨害を受けると一定時間硬直・後退させられたり、技が発動できなくなる)。戦闘のテンポ感は良くないし、敵を打ち破ったときの爽快感も薄いが、雑魚戦でもある程度の戦略性が求められるため最後まで作業感なくプレイし続けられた。

 

以下、ストーリーのネタバレあり。

 

本作はオーストリア(現実世界)で死んだオーロラがレムリア(夢世界)で目覚めるところから幕を開け、レムリアでの冒険を終えてオーストリアへと戻ったオーロラは作中で「生き返った」と言及される。彼女自身の死から始まった冒険の終着点は生、つまり死から生へと向かう構成になっている。

終盤、オーストリアに戻ったオーロラは国民をレムリアへ連れて来る。普通なら主人公が無事に現実世界へ戻りハッピーエンドとなりそうなところが、本作では主人公は夢世界に留まってしまう。「悪夢よ、私を解放して」と祈っていたオーロラが、悪夢の中で出会ったかけがえのない仲間と共に、悪が打ち払われた夢の中で生きることを選択する。かつての現実は今や夢となり、夢が現実となる。

全体的に控えめなボリュームではあるものの、サクッと遊べて心地良い余韻に浸れる良作だった。